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2021.10.05
「最近、おなか周りにお肉がついてきたなぁ……」と体型の変化で悩んでいませんか? 年齢を重ねるにつれて気になってきたおなか周りのお肉は「内臓脂肪」の可能性が高いです。
内臓脂肪は特に男性につきやすい脂肪とされていて、動脈硬化の可能性が高まったり糖尿病などの生活習慣病につながったりするリスクも。過剰に蓄積するとメタボリックシンドロームの診断基準にも含まれるため、体型が気になりはじめたら早めに対策したいところです。
この記事では内臓脂肪が気になる方へ向けて、内臓脂肪を健康的に減らす方法をご紹介します。おなか周りに脂肪がつきはじめたとお悩みの方は、この記事でご紹介している内臓脂肪の減らし方を参考にしてみてください。
体脂肪とは体に蓄積した脂肪のことで、体についた脂肪の比率をパーセントで表したものを「体脂肪率」といいます。体脂肪を蓄える脂肪細胞はホルモンなどの物質を作り出したり、エネルギーを貯めて体温を保ったり、外部から衝撃を受けたときに内蔵を守ったりする役割があり、特に女性は月経や妊娠、出産などを正常に行うためにある程度の体脂肪が必要です。
肥満は体脂肪が体に過剰についてしまった状態を指します。体重は体脂肪だけでなく、骨や筋肉、血液を含む水分を合計した数値のため、体重が多いだけでは肥満とは言えません。
肥満のタイプは脂肪のついている場所によって「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」の2種類に分けられ、中でも「内蔵脂肪型肥満」は糖尿病や高血圧症などの生活習慣病のリスクが高いため、注意が必要です。肥満かどうかの基準としてはBMI(Body Mass Index)が用いられ、以下の計算式で数値を算出します。
[体重(kg)]÷[身長(m)²]
脂肪が過剰に蓄積した状態で、BMIの数値が標準値の25を上回っている場合は、肥満に該当します。
しかしBMIだけでは筋肉と脂肪のどちらが多いのかが判断できません。BMIが25未満でも内臓脂肪が蓄積している「隠れ肥満症」の状態も考えられます。BMIは肥満かどうかを判断する1つの基準として理解しておきましょう。
出典:三好 美紀 肥満と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省)※2019年12月17日最終更新
内臓脂肪とは、おなかの臓器周辺につく脂肪のことです。食事などで摂取した糖や脂質などの消費しきれない分が脂肪として蓄積します。内臓脂肪が増えると、高血糖や高血圧などにより動脈硬化の可能性が高まったり、糖尿病などの生活習慣病につながる可能性もあります。
脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪の2種類があり、脂肪がつく場所によって分けられます。内臓脂肪はおなか周辺の臓器に蓄積し、腹筋の内側や小腸を包む腸間膜などにつきやすい脂肪であるのに対し、皮下脂肪は皮膚と筋肉の間に蓄積し、お尻や太ももなどにつきやすい脂肪です。どちらの脂肪がついているかによって肥満のタイプも分けられ、内臓脂肪が増えた体型を「リンゴ型肥満」、皮下脂肪が増えた体型を「洋ナシ型肥満」と呼びます。また男性は内臓脂肪、女性であれば皮下脂肪がつきやすいとされており、内臓脂肪は体につきやすく落としやすいですが、皮下脂肪は少しずつ蓄積していき落としにくいです。
内臓脂肪が増えるのは、暴飲暴食や運動不足などの生活習慣の乱れが主な原因です。暴飲暴食により栄養の摂取量が増えるのに対し、運動不足で消費エネルギーが低下し、消費できなかったエネルギーが内臓脂肪として体に蓄積していきます。
また加齢も内臓脂肪が増える原因の1つです。年を重ねると基礎代謝が低下するため、内臓脂肪がつきやすくなります。基礎代謝とは、心臓の動きや呼吸、体温調整など、生きているだけで消費するエネルギーです。その基礎代謝が低下するだけでなく、加齢によって足腰が弱り、運動不足になることで筋肉量も低下します。その結果、摂取したエネルギーを消費できず、内臓脂肪として蓄積されるのです。
内臓脂肪が増えすぎることで考えられるリスクは「血糖値が上がる」「血圧が高くなる」などです。内臓脂肪はさまざまな生理活性物質(サイトカイン)を分泌しており、正常値であれば生理活性物質の中の「アディポネクチン」が血圧や中性脂肪を低下させたり、動脈硬化を防止したりします。しかし、生活習慣の乱れや加齢などにより内臓脂肪が増加すると、血糖値を上昇させる「TNF-a」や血栓をつくって動脈硬化を促す「PAI-1」、血圧を上昇させる「アンジオテンシノーゲン」などの生理活性物質を分泌。糖尿病や高血圧、脂質異常症などの病気を引き起こします。その危険性からメタボリックシンドロームの診断基準で内臓脂肪の項目が必須となっているのです。皮下脂肪も生理活性物質を分泌していますが、内臓脂肪と比べて量が少ないため、内臓脂肪が多い内臓脂肪型肥満の方がより問題視されています。
メタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満が原因の高血糖や高血圧、脂質異常によって心臓病や脳卒中などの病気になる可能性が高まっている状態です。
診断基準としては「ウエスト周囲径が男性は85cm以上、女性は90cm以上」で、「内臓脂肪の面積が男女ともに100㎠以上」であること。これに加えて「中性脂肪が150mg/dlかつ/またはHDLコレステロールが40mg/dl」「収縮期血圧が130mmHg以上かつ/または拡張期血圧が85mmHg以上」「空腹時の血糖値が110mg/dl以上」であることのうち2つ以上が当てはまった場合も該当します。
出典:田中 久子 メタボリックシンドロームを予防する食事・食生活 | e-ヘルスネット(厚生労働省)※2021年3月9日最終更新
ここまで体脂肪や肥満、内臓脂肪の危険性などについて解説してきました。ここからはどうしたら内臓脂肪が落とせるのかについて解説します。ポイントを押さえて健康的に内臓脂肪を落としましょう。
内臓脂肪は摂取エネルギー量と消費エネルギー量のバランスが崩れ、消費エネルギー量を摂取エネルギー量が上回ることで増えていきます。つまり、自分の推定エネルギー必要量を把握することで、どのくらいの食事を取るのが適当なのかを知ることができ、摂取エネルギー量の調整ができるようになるのです。
1日の推定エネルギー必要量は基礎代謝や身体活動レベルによって異なり、以下の計算式で求められます。
推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル
※成人(18歳以上)
基礎代謝量は厚生労働省の「参照体重における基礎代謝量」をもとに以下の計算式で求めます。
基礎代謝量(kcal/日)=基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)×基準体重(kg)
身体活動レベルは、座っている時間が長いオフィスワークなどでは「低い」とされ「1.50(1.40~1.60)」で計算し、オフィスワークでも通勤や買い物などの軽い運動を行う場合には「ふつう」で「1.75(1.60~1.90)」で計算、立ち仕事で移動が多かったりスポーツを日常的に行っていれば「高い」と判断され、「2.00(1.90~2.20)」で計算します。
※数値は代表値です。()内は行動量により変動します。
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書 ※2021年1月24日最終更新
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
内臓脂肪を減らすために大切なのは、バランスの良い食事です。
内臓脂肪は消費するエネルギーより摂取したエネルギーが上回ることで蓄積されます。そのため高エネルギー、高脂肪の食事を取り続ければ、内臓脂肪がつきやすくなるでしょう。
2005年6月に策定された「食事バランスガイド」では、1日に「何を」「どれだけ」食べるとバランスの良い食事になるのかをコマのイラストで分かりやすく表しています(※)。食材ではなく料理で表しているため、ひと目で自分の食事で多いものと足りないものを把握することが可能です。
食事バランスガイドは料理を「主食」「副菜」「主菜」「乳製品」「果物」の5つに分けています。主食はご飯やパン、麺などを指し、副菜は主な材料に野菜やいも、きのこ、海藻を使った料理、主菜は肉や魚、卵、大豆、大豆製品をメインに使った料理です。
食事の量は性別や年齢、身体活動レベルによって異なるため、食事バランスガイドのコマの大きさを変えることで調整します。身体活動レベルは「低い」「ふつう」「高い」の3段階です。厚生労働省の「参照体重における基礎代謝量」と同じく、立ち仕事や移動が多かったり活発な運動習慣がある方の身体活動レベルは「高い」とし、デスクワークが中心であってもウォーキングなどの軽い運動を習慣としている方は「ふつう」、日常で座っている時間が長い方を「低い」としています。
毎食バランスの良い食事を取るのが理想ですが、食事バランスガイドはあくまで1日分の食事の目安です。1食ごとにバランスの良し悪しを判断するのではなく、3~7日ほどの期間でバランスを確認しましょう。
もし食事バランスガイドで定められている量が多くて食べられない、忙しくて外食ばかりになってしまうなど、バランスの良い食事を取るのが難しい場合には、健康食品を活用するのもおすすめです。食事自体はしっかり取りつつ、足りない栄養を健康食品で補うようにしましょう。
出典:食事バランスガイドの特徴:農林水産省 ※2021年7月時点
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/features.html
気を付けた方がよい食事の取り方
食生活を見直すときには食事の内容だけでなく、食事の取り方についても振り返りましょう。例えば以下のような食事の取り方は内臓脂肪を増加させる原因になる可能性があるため、注意が必要です。
食事の内容を見直しても、食事の取り方を改善しないと効果的な内臓脂肪対策はできません。食事を腹8分目にする、ゆっくりよく噛んで食べるなど食事の取り方を工夫することが大切です。
睡眠不足にも要注意!
忙しいからと睡眠を疎かにすると、内臓脂肪増加につながる可能性も。
睡眠時間が4時間以下の状態が2日間続くと、食欲を抑えるホルモンの「レプチン」が減少し、反対に食欲を増大させるホルモンの「グレリン」が増します。これにより必要以上に食事を取ってしまい、内臓脂肪が増加するのです(※1)。
必要な睡眠時間は個人差がありますが、6~8時間が妥当であるとされています(※2)。
※1
出典:三島 和夫 睡眠と生活習慣病との深い関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省)※2021年7月時点
※2
出典:健康づくりのための睡眠指針 2014(厚生労働省)※2014年3月時点
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
内臓脂肪を落としたいと考えたときに運動を思い浮かべる方も少なくないでしょう。運動をはじめる前に、どのような運動が内臓脂肪を落とすのに効果的なのかを知っておくことで効率的に対策ができます。
内臓脂肪を落とすために意識したいことは「消費エネルギー量を増やすこと」です。運動をする際に「激しい運動をたくさんやらなくてはならない」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、日常生活の中で歩く歩数を増やすだけでも消費エネルギー量を増やすことができます。例えば、エスカレーターやエレベーターではなく階段を使う、飲み物を手元に置いておかずに、毎回冷蔵庫まで飲みに行くなどの少しの工夫でも問題ありません。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、日本人の平均歩数は男性が6,793歩、女性が5,832歩です(※)。はじめは平均歩数より多く歩くことを目標にして、それが達成できるようになったら1日10,000歩を目標にして歩くと良いでしょう。
出典:令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要(厚生労働省) ※2019年11月時点
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
内臓脂肪は過剰に蓄積すると糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病を発症するリスクのある脂肪です。そのためメタボリックシンドロームの診断基準として組み込まれており、予防のためには食生活などの生活習慣を見直す必要があります。
食生活の改善で食事制限を行う方も少なくありませんが、過度な食事制限は栄養が十分に取れず、体調を崩す可能性も。食生活は食事バランスガイドを参考にバランスの良い食事を取ることを意識しましょう。
内臓脂肪は皮下脂肪に比べてつきやすい脂肪ではありますが、落ちやすい脂肪でもあるため、食生活や運動など日常生活を少し工夫するだけでも改善が期待できます。体型の変化が気になる方は今回ご紹介した「内臓脂肪の落とし方」を取り入れてみてください。